維新の会政策ビラ 「都構想Q&A」批判


Q1 財源は全部大阪都に持っていかれるのですか?


A.特別区の財源の半分以上を占める「財政調整交付金」。その80%以上は医療・福祉・教育などの身近な住民サービスに使います。残り20%は特別区の広域サービス。大規模な都市開発・鉄道・高速道路・港・大学・病院など)へ。いずれも特別区内で使うことになります。今までのように広域サービスを大阪府と大阪市がバラバラで行うよりもムダなく効率的に実施できます。


 都構想では「成長戦略の推進など広域行政のマネジメントが、府に一元化」特別区は「身近な住民サービスを担う」としている。

特別区の権限と事業を限定し、その住民サービスという行政需要のみ(それも行革プランで切り捨てまくった揚げ句の残った施策)を必要額として予算(法定協「粗い試算」)を見積もりして、4分の1に激減する税収でまかなえないものを「財政調整交付金」で埋める予算なので、80%以上が医療・福祉・教育などの身近な住民サービスに使われるのは当たり前である。それでもなおかつ、その住民サービスを維持するのに、市有財産の土地を売却したり、府から新たに借金(財政調整基金の借り入れ)をしなくてはならない状態で、住民サービスが十分に行われるとは考えられない。福祉予算枠を増やさず、枠から押し出される税金を軍事費に当てる「消費税は福祉に使っています」というペテン師の手法と同一である。

 さらに、20%もの莫大な税金(大阪市の税収の2割は約1,400億円、財政調整交付金相当額に限定するとその20%は986億円 大阪市2013年度決算より)は、維新の言うとおり大規模で無駄な、なにわ筋線、阪神高速左岸線、大学統合そして地域医療で役立ってきた必要な住吉市民病院を廃止して公的医療を放棄した病院に作り上げるなど、市民サービスに背を向けた財界のための効率的な事業に振り向けるのだ。「広域行政の一元化」と「特別区は身近なサービス」は住民サービスに大阪府は責任を負わず、関知しないことの宣言である。


Q3 民営化しても区民の利益にならない?


A.水道料金。特別区議会議員が決めるので住民サービスを低下させるような値上げはありません。むしろ、民営化を前提にすでに、水道基本料金は900円から800円に下がっています。また地下鉄の初乗り運賃もすでに200円から180円へ。さらに民営化に伴い、数千億円の株式を大阪市が手にすることに。地下鉄が売却されて、大阪府の借金返済に充てられるとうこともありません。


水道は一部事務組合となる。一部事務組合も管理者、職員、議員がおかれるが、管理者や議員は市民の選挙で決まるわけではない。管理者は区長の互選、議員は特別区議会議員から選出されるもので、事務組合に行っても管理者や議員がいるわけでもなく、「遠い自治体」として市民の声は届きにくいのが現実である。

特別区議会議員が決めるから値上げはないというのは単なる決めつけで根拠がなく意味不明だ。そもそも、水道料金や地下鉄の値下げは、現在も公営企業として黒字を出しているから出来たことで、民営化や都構想で減額されたのではない。また、民営化して数千億円の株式を大阪市が手にしても市民に数千億円還元されるわけではない。年間300億円以上(2013年303億円)利益を生み出す優良企業の地下鉄を民営化せず、公営のまま充実させていけば、10年で3千億円の市民に還元できる財源を手にすることができるのだ。そしてそれがずっと続くにも関わらず、それを民営化して手放すこと自体がムダ遣いだ。民営化して、売却益を財界のための大開発に使うのが維新の会の狙いだ。

※地下鉄民営化をした場合の効果額は最大に見積もっても年間165億円で、地下鉄利益に遠く及ばない。

(後段の資料参照)


Q5 財政効果は本当にあるんですか?


A.大阪都になると再編効果は3,386億円。使える財源は2,600億円に上ります。さらに関西電力株の売却で1,000億円以上の財源が生み出されます。これまで市役所のムダ遣いを許してきたのは、自民党、民主党、公明党、共産党です。これを徹底的に改めているのが大阪維新の会。税金のムダ遣いを絶対に止めるシステムが大阪都構想です。実際に、大阪の土地の価値が上がる、有効求人倍率が上がる、外国人観光客が激増する…など経済効果が出始めています。今後、二重行政をなくし、広域行政マニュフェストを実現すれば、世界と戦える都市となり計り知れない経済効果がうまれます。


 再編効果の3,386億円は2017(H29)年~2033(H45)年の17年間の合計である。このうち単年度の効果額が273億円(市分217億円+府分56億円)と最大と市が試算する2033(H45)年をみてみると、273億円のうちの約144億円は地下鉄・バス・一般廃棄物の民営化及び病院統合であり、都構想の効果とはいえない。維新の会の看板メニューの「二重行政解消の効果」は約3億円にとどまる。さらに、約21億円は、すでにある大阪市行革プランにそって実行される予定の削減計画を見積もったもので、これも都構想の効果とは言えない。残る105億円は、府市合わせて2,660人もの職員削減計画の実行によるものである。要するに、効果額のほとんどは民営化と行革そして職員大リストラによって生まれる額で都構想の効果額ではないのだ。維新の3,386億円は、都構想そのものからでは説明できない代物で、苦し紛れに「民営化は都構想の重点です」(維新の会Q&A)としか反論できない、まさにペテンとしか言いようがないものだ。

 なお、関西電力株の売却は今でもできるものであり、地価や有効求人倍率の上昇、外国人観光客の増加は現在の経済情勢、派遣労働者の拡大等の労働情勢や円安の影響であって、都構想で経済効果が出たわけではないのは言うまでもない。

Q2 区長は権限をもたないのでしょうか?


A.住民の皆さんの選挙で選ばれた特別区の区長が誕生します。そして、特別区の区長は中核市並みの権限を持つことに。身近な区長に予算編成や教職員人事権などの権限があるため、住民の声が行政に反映されやすくなります。今まで、大阪市長に直接声を届けられたことがありますか。特別区に権限はなく、すべては大阪府が決定するという噂は嘘です。


 政令指定都市として大阪市の一体的なまちづくりが可能であった特例的権限はすべてなくなる。特に2000年の地方分権によって府県から指定都市へ移譲された都市計画権限(用途地域、4車線以上の道路、10ha以上の公園、都市再生特別区の地区計画等)は全て府の権限になる。市民生活に影響を及ぼす都市計画は特別区では決められない。中核市なみの特別区が5つできたとしても、一体的なまちづくりはできずカジノ誘致など大企業本位の開発のために大阪府にその決定権を握られる。また、特別区は大阪府に実質的財政運営の権限を握られ、これまで直接国と交渉できた地方債、交付税、補助金は大阪府頼みになる。構造的に大阪府の下部組織の特別区が5つできるだけだ。

住民の声が反映されるというが、何の根拠もない。現在の大阪市より小さい規模が理由なら、5区より現行の24区をそのまま特別区にすれば一層身近になるはずだ。問題は、首長をはじめとした自治体の住民の声を受け止める姿勢とそれを実行する行政システムの構築であって、自治体規模の大小ではない。ましてや都構想とは何の関係もないことである。


Q4 大阪府の借金は特別区民に押し付けられるの?


A .大阪府は、橋下知事時代以降、「臨時財政対策費」を除く借金は減らしてきました。さらに、橋下知事が隠れ借金(減債基金の借り入れ/約5200億円)をストップ、松井知事が返済のメドをつけました。そもそも、ここまで借金状態になったのは、自民党、民主党、公明党、共産党の府政のときです。これをしっかり立て直しつつあるのは大阪維新の会。大阪府の借金を特別区だけに押し付けることはありません。 大阪府の借金は大阪府民全体で返済していきます。


橋下と松井で大阪府の借金は増大し、起債に国の許可が必要な起債許可団体になり、赤字債権団体転落の危機にあえいでいる。借金を減らしたというのは大ウソ。

太田府政時代より橋下・松井で2,896億円も借金を増やし実質公債比率を2.4%も悪化させ、自力で起債できない起債許可団体にしてしまい、赤字債権団体 (35%以上)一歩手前の早期健全化団体(25%)転落の危機を招いたのは橋下・松井だ。

 

(大阪府一般会計公債残高)

 %表示は実質公債比率

18% 起債許可団体/25% 早期健全化団体/

 35% 赤字再建団体 )


太田知事

2000(H12)

2008(H20)/2月

橋下知事

2008(H20)/2月

011(H23)/11月

松井知事

2011(H23)/11月~

2007年度末

 50,627億円

 16.6%

 

2010年度末

 51,802億円

 17.6%  

2011年度末

 53,804億円

 18.4%

2011年度末は、

 松井知事)

2013年

 53,523億円

 19.0%

 

 

 大阪府の借金は、直接特別区が負担する。府は特別区以外の市町村もあり、府民一人当たりの借金と描いて全体で返済というのは比喩としての限りで一般的に間違いではない。しかし、現在もそうであるように、大阪府と市町村は別の自治体であり、実際に府民全員がそのお金を大阪府に払うわけでも、府下市町村が分担金を拠出するわけでもない。料金の値上げや経費削減などの財政運営で個別自治体としての大阪府が独自で返済していくのである。

一方、特別区は大阪府の特別区であり、他の市町村のように全くの別個の自治体ではない。特別区は2000年に地方自治法の改正で都の下部組織から法的に基礎的地方公共団体になったとはいえ、通常の市町村と同じ権能を持つわけではない。「特別区は都の区」(地方自治法第281条)であって、特別財政調整交付金により財政の大半が府に握られることにより、構造的に府の「下部組織」とならざるを得ない。これは事実であり、府なしに特別区は存在しないわけであるから、早期健全化団体や赤字再建団体転落を避け、起債許可団体から脱するためには、特別区含む大阪府として公債を償還して残高を減らすなり、減債基金への積み立てを多くすることで実質公債比率を18%未満まで減じる必要がある。その財源に大阪市の財産が使われ、大阪市民のみが使用料等の値上げなどによって負担せざるを得ないことは日を見るより明らかである。「大阪府民全体で返済します」は大阪市民は負担がないようにみせかける大ウソである。



 以上のように、維新の会の主張はデタラメである。しかし、維新の会の指摘するWTC(1,193億円)の破綻などの大企業のためのムダ遣いは、自公民路線が作り上げてきたものである。この市政を改革しなければならないが、問題はその方向である。橋下市長と維新の会は、都構想によって大阪市の自治と財源を奪ったうえで、権力を知事に一元化し、市民生活を放置したまま財界のための大開発に税金を注ぎ込むという、これまでの自公民の大企業本位の箱物行政を自治体改造で純化させようとしている。「自民党をぶっ潰す」と言って自民党の新自由主義路線を強化した小泉と同じだ。

橋下は市民サービスは切り捨て、なんでも民営化する方向だが、「民間活力の導入」は、ワンマン社長のオヤジよろしくセクハラ公募校長、セクハラ、文書偽造など乱脈公募区長、利私欲公私混同の民間交通局長、パワハラ大阪府教育長などを生み出した。橋下と維新の会の「民活」は、財界のための民営化や経費削減至上主義で、そのため市民生活を守る法や公的責任を無視することを求めるものとなる。そのため、一連の不祥事は、当該の「なにをしてもよい」という意識から必然的に生じたものであり、個人の資質だけの問題ではなく、橋下と維新の会の都構想のめざす本質を示したもので、安倍と共通のものだ。

 民営化や大規模開発をやめ、市民生活を第一に公的責任を拡充させる改革こそ必要である。自民党(自公民)の推進してきた大企業本位の市政を都構想で純化拡大させるのか、市民生活を豊かにするために公的責任を拡充させる市政改革かが問われている。


【Q2関連資料】都構想協定書より抜粋

大阪特別区事務組合(仮称)(以下「事務組合」という。)とする。

②特別区の設置の日に設置する。

③共同処理する事務は、別表第2‐3に掲げる事務とする。

④事務所の位置は、現在の大阪市役所本庁舎内とする。

⑤議会の議員の定数及び選挙の方法は、特別区の協議により定める。

⑥管理者は構成団体の長の互選により定める。・・・・

 

別表第2‐3  特別区が一部事務組合を設けて共同処理する事務

①事業

国民健康保険事業、介護保険事業、水道事業及び工業用水道事業

②システム管理

住民情報系7システム〔住民基本台帳等システム、戸籍情報システム、税務事務システム、総合福祉システム、国民健康保険等システム、介護保険システム、統合基盤・ネットワークシステム〕等

③施設管理

<福祉施設>

・児童自立支援施設(大阪市立阿武山学園)・情緒障がい児短期治療施設(大阪市立児童院・大阪市立弘済のぞみ園)・児童養護施設

(大阪市立入舟寮・大阪市立弘済みらい園・大阪市立長谷川羽曳野学園)

・母子生活支援施設

(大阪市立北さくら園・大阪市立東さくら園・大阪市立南さくら園)

・母子福祉施設(大阪市立愛光会館)

・保護施設

(大阪市立大淀寮・大阪市立淀川寮・大阪市立港晴寮・大阪市立第2港晴寮)

・大阪市立心身障がい者リハビリテーションセンター

(身体障がい者更生相談所・知的障がい者更生相談所に係る部分を除く。)

・福祉型障がい児入所施設(大阪市立敷津浦学園)

・福祉型児童発達支援センター

(大阪市立都島こども園・大阪市立姫島こども園・大阪市立淡路こども園)

・ホームレス自立支援センター

・障がい者就労支援施設(大阪市立千里作業指導所)

・特別養護老人ホーム(大阪市立大畑山苑)

・医療保護施設・養護老人ホーム・特別養護老人ホーム(大阪市立弘済院)

<市民利用施設>

・青少年野外活動施設(大阪市立信太山青少年野外活動センター)

・ユースホステル(大阪市立長居ユースホステル)

・青少年文化創造ステーション(大阪市立青少年センター)

・児童文化会館(大阪市立こども文化センター)

・障がい者スポーツセンター

(大阪市舞洲障がい者スポーツセンター・

大阪市長居障がい者スポーツセンター)

・市民学習センター

(大阪市立総合生涯学習センター・大阪市立阿倍野市民学習センター・

大阪市立難波市民学習センター)

・大阪市中央体育館

・大阪市立大阪プール

・靱庭球場

・女性いきいきセンター

(大阪市立男女共同参画センター中央館・大阪市立男女共同参画センター北部館・大阪市立男女共同参画センター西部館・大阪市立男女共同参画センター南部館・大阪市立男女共同参画センター東部館)

<その他>

・急病診療所(中央急病診療所・都島休日急病診療所・西九条休日急病診療所・十三休日急病診療所・今里休日急病診療所・沢之町休日急病診療所・中野休日急病診療所)

・大阪市動物管理センター

・キッズプラザ大阪(運営補助)

・斎場(大阪市立北斎場・大阪市立小林斎場・大阪市立佃斎場・大阪市立鶴見斎場・大阪市立瓜破斎場・大阪市立葬祭場)

・霊園(泉南メモリアルパーク・瓜破霊園・服部霊園・北霊園・南霊園)

④財産管理

・「大阪市未利用地活用方針」に基づき「処分検討地」とされた土地等の管理及び処分

・オーク200 事業の終了に伴い大阪市が引渡しを受けた財産の管理及び処分

・大阪市の土地先行取得事業会計に属していた財産の管理及び処分


【Q3関連資料】

地下鉄民営化か公営存続か、どちらが市民により多く還元できるか明白。

○地下鉄民営化に関する効果(2013/12/20第11回法定協追加資料)

<持続的効果>

内訳

効果額

一般会計繰出金の削減

71億円

市税収入(固定資産税等)

50億円

株式配当収入

25億円

府税収入(法人事業税等)

19億円

165億円

 

○地下鉄経常利益  大阪市交通局HPより

2012年度  268億7,100万円

2013年度  303億4,400万円


【Q4関連資料】


大阪府公債残高

H24決算ベース

25は予算

古い資料

大阪府HP


※特別区((ウィキペディア)…2000年(平成12年)の地方分権改革により、特別区は「基礎的な地方公共団体」と規定され、その母体である東京都から相当程度の独立性を与えられた。ただし、特別区の法的地位は未だに「特別地方公共団体」であり、固定資産税の賦課徴収や消防責任など本来は市町村の権限に属するものが東京都(特別区の連合体としての地位にある東京都)に留保されており、また都区財政調整制度のような地方税の特殊な分配制度があるなど、市町村のような「普通地方公共団体」と同一の権能を有するわけではない。


※地方自治法

(特別区)

第二百八十一条  都の区は、これを特別区という。

2  特別区は、法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き、地域における事務並びにその他の事務で法律又はこれに基づく政令により市が処理することとされるもの及び法律又はこれに基づく政令により特別区が処理することとされるものを処理する。

地方自治法(都と特別区との役割分担の原則)

第二百八十一条の二  都は、特別区の存する区域において、特別区を包括する広域の地方公共団体として、第二条第五項において都道府県が処理するものとされている事務及び特別区に関する連絡調整に関する事務のほか、同条第三項において市町村が処理するものとされている事務のうち、人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から当該区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務を処理するものとする。

2  特別区は、基礎的な地方公共団体として、前項において特別区の存する区域を通じて都が一体的に処理するものとされているものを除き、一般的に、第二条第三項において市町村が処理するものとされている事務を処理するものとする。

3  都及び特別区は、その事務を処理するに当たつては、相互に競合しないようにしなければならない。